陽の章 五禽戯


18「気」がわかれば

 
 この五行の理論は、まず最初から理解できるものではありません。というより、私たち現代人にとっては昔の人の素朴な「迷信的理解」としか思えないでしょう。

 私もこの理論に初めて接したときは、まずバカバカしくて信じられませんでした。しかし、太極拳や気功を学ぶうちに、「気」という不思議なはたらきが、感じられるようになりました。そしてそれまで自分が知らなかった「神秘の世界」が開かれたのです。

 それから、少しずつ、独学で「経絡」や「ツボ」について学ぶようになりました。経絡の理論や陰陽五行がわからなければ「気功」の深遠な面は理解できないのだと知りました。
 
「気」の理解が東洋医学の、陰陽五行の根本になります。「気」を無視すれば、東洋医学は真に理解することはできません。

『「気」は天にもあり地にもあり、森羅万象は「気」によって成り立っている。』と言われますが、まず「気」は「電気」のようなものであるととらえてみましょう。

 現代はエレクトロニクスの時代といわれ、私たちはあらゆる電気機器を使って生活しています。

 そう携帯電話はもう私たちの日常で必要不可欠ですが、それを利用するためには毎晩、充電しなければいけませんね。

 同様に、私たちが生きているということは、私たちの体にはすでに「気」のエネルギーが充電されています。そしてその充電したエネルギーを日々の生のために消費しています。
 
 「気」のエネルギーこそが生命力であり、「心」と「体」の共通のエネルギーなのです。

 「気」の充電は、次の三つの方法で行われています。

1 呼吸(呼吸とは酸素(O2)を吸って二酸化炭素( CO2)を排出することである、と理解されていますが、中国の気功でも、インドのヨガの教えでも、呼吸によって、大気中から精妙なエネルギーを吸収することが教えられています。)  

2 食事(食物からも、栄養素だけでなく、「気」のエネルギーを吸収しています。ただし、その食べた物を胃や腸で消化して体内に吸収し、排泄するためにも「気」のはたらきが使われますから、過べ過ぎると、元気になるどころか、無気力になってしまいます。)

3 睡眠(睡眠によっても私たちは日々「気」のエネルギーをチャージしています。どんなに栄養を補給しても、深呼吸を繰り返しても、眠らないでは生きていくことができません。)


 充電したエネルギーは、肉体を動かすことで消費されます。食べ物を消化するためにも、排泄のためにも「気」が使われます。五感のはたらきで、何かを知覚することでも「気」は消費されます。目は大量に「気」を消費します。脳でものを考えることでも「気」は消費されます。

 こうして、「気」はさまざまな形で消費され、現代人は慢性的な「気」のエネルギー不足に陥っています。慢性疲労、倦怠感、無気力症は「気」が不足している証拠です。「気」の不足しているからだは自分の体を流れている「気」も周囲の「気」も感じることができません。

 

 
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